梵釈寺歴史案内

 〔由来〕
 創建時期は、未詳ながら一説に延暦五年(786)桓武天皇の御代大津・滋賀の里の山中に建立され栄えていた梵釈寺の面影を映さんと在地梵釈寺本堂の豪族が天文年(1532~55)に鋳物師村に建立されたと伝え、戦国時代以降は衰退していた当寺を天和年間(1681~83)に日野・正明寺(黄檗宗)の住持晦翁(かいおう)禅師が梵釈寺復興を志していたところ時の領主奥田三良衛門がこれを聴き、寺一切を寄進したので、現在の地に堂宇伽藍を移して、その師・黄檗宗四世獨湛和尚を招いて開山とし山号を天龍山としたと伝え、本堂に獨湛和尚の揮毫なる聯(れん)が掛かる。
     梵釈天龍之宮八百年来重興斯世                       (
天龍山梵釈寺は八百年の月日を重ねここに再興す)
享保十三年(1728)・翠峰(すいほう)禅師の時、京都宇治・万福寺の末寺となり現在に至っています。

また、近江商人で謄写版(ガリ版)の発明者堀井家の菩提寺でもあります。

〔宝冠阿弥陀如来坐像〕国重文(像高百二十センチメートル)宝冠阿弥陀如来
 この、像は当寺の本尊で高い宝
髻(ほうけい)を結び、胸に瓔珞(ようらく)を付けていることから長く観世音菩薩像として信仰され、国の重要文化財(明治44年)指定を受けています。
 像は、両肩にかかる納衣は襟を首につめずU字形 通肩(つうけん)に胸を開け納衣の衣褶(いしゅう)は鎬(しのぎ)だった襞(ひだ)彫りだし、手は阿弥陀定印を結んで結跏趺坐をし、面相は鋭く厳しい表情ではあるが衆生の心を受け容れてくれる像様は、円仁(慈覚大師)(794~864)の招来による金剛界八十一尊曼荼羅に基づく比叡山常行三昧堂の本尊にならった阿弥陀如来像といわれ、檜一材からなり内刳りは施されていません。
膝前は、横木一材で両手の前腕中程から先の部分を共に彫りだし大部に矧ぎ付けられています。

(九世紀末~十世紀前半)の作風とされ漆泊作りで宝冠阿弥陀如来像として最古・最大の仏像であります。

石造 宝篋印塔〕嘉暦三戊申(1328)年九月五日
大願主沙弥道一 藤原 ■ ■                   
宝匧印塔この塔は、鎌倉時代の建刻銘があります。
 塔身には四面に梵字で仏を表す金剛界四仏の種子(しゅじ)、笠の隅飾りにも梵字が彫られ、基礎の格狭間(こうざま)には山茎蓮華(さんけいれんげ)・散蓮(さんれん)、また、近江式装飾文と呼ばれる孔雀の文様が半肉彫りで彫られています。
 石材は、日野町蔵王で産出する米石といわれる花崗岩が使われています。相輪は、平成二十一年十一月に復元されています。

img_3055玄関に掛かけられているお軸                                               

三聖吸酢(さんせいきゅうさん)
孔子、老子、釈迦が瓶に入っている酢を舐めている様子。宗教は違うけれど、酢の酸っぱいのは同じ。宗教は違うけれど真理は同じという事。

 

 

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鸞鳳(らんぽう)
「枳棘(ききょく)は鸞鳳(らんぽう)の棲む所に非ず、百里は豈に大賢の路ならんや」                        ○ 枳殻(きこく)や棘(きょく)のような悪木には、鸞や鳳などの神鳥の棲みつく所ではない。また百里のような狭い地を治める官職は、優れた人物の就くべき役職ではない。転じて、優れた人物は賤しい場所や地位には己が身を置かないことの喩えとなる。枳棘は共に悪木である。鸞は鳳凰の一種。

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秣馬
伯牙鼓琴而六馬仰秣
(はくがこきん、ろくばはまぐさを仰ぐ)
一芸を極め優れた音楽家、瓠巴や伯牙は、人のみならず魚や馬も感動させる力をもっている。
たとえ声が小さくても必ず聞こえるものであり、善行も隠れようがない。
玉が山にあれば土質が良く草木が活き々と潤い、水中に珠があれば水質が良く崖も光沢が良くなる。したがって人は常に善行を積んでいくことが大切である、充分に善を行なえば、やがて世間にも自ずと知られるようになるものである

自分は世間に認められていないと思い当たる方…、それはあなたの努力・精進・勉強がまだ不充分であるのか…、それとも種子が土壌の中で発芽している最中で、もう少し頑張れば土から芽を出す直前かもしれません。

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蟠虎
龍蟠虎踞(りゅうばをこきょ)
竜や、とらのように抜きんでた能力をもった者がある地域にとどまって、そこでその能力を存分に発揮すること。▽「蟠」はじっと居座ること。「踞」はうずくまること。近づくのが困難な状態を指す。本来は、地勢が険しく、攻めるのに困難な意で用いられたが、転じて、竜やとらのように力強い勢力をもった者が居座って、他を威圧する地域・集団を形成する意味になった。「竜」は「りょう」とも読み、「蟠」は「盤」とも書く。また、「虎踞竜蟠遊龍(こきょりゅうばん)」ともいう

img_3065遊龍

 

img_3063梵釈寺方丈の襖